第二章 精神病院での入院暮らし
2.現実への対峙
【マンションベランダの鉢植えと彼との約束】
そんな感じで、私は外泊後の数日間を過ごしていた。
仕事もせずにこんな所で遊んでいる自分に、少し罪悪感を感じながらも、今はこの環境から脱せない事実に半ば諦めと、そして、ここの心地よさを満喫し、気を紛らわせていた。
しかし、そんな中でも、彼との話が結論付か無かった事、そして、
何よりこのところの晴天で、「マンションのベランダにある鉢植えに水をやらねば。」との思いが、頭の片隅にあった。
父は、もうマンションに居ない。
そこで、私は彼の職場の昼休みの時間帯に、
彼へ電話をし、「明日は休日だし、今夜は家に戻ってきてくれ。そして、鉢植えに水を与えてくれ。」と連絡した。
彼は、「あなたの父親が居られるように、マンションに帰らないようにしている。」と建前を言っていたので、その建前が崩れた以上、これを了承するしかなかったのだろう。
「分かりました、今日はマンションに戻ります。」と約束をして電話を終えた。
それでも鉢植えの事が気になり、
私はこの日、単独外泊の特権を利用し、マンションに立ち寄り、植木に水をやると共に、帰ってくるだろう彼に対して、「戻ってきてくれて有難う。」と言う手紙を机の上へ置いて、病院へと帰った。
さて、その翌日も、これまた日差しの強い晴天だった。
この日(祝日で彼も仕事が休みの日)も、私は皆とワイワイ楽しんだ。皆と言うよりは、主に『ゆきさん』の相手をしている時間が殆んどだったのだけれど。
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