鬱病生活記

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 目次
 はじめに
 第一章

 第二章

 第三章

 第四章

 第五章

 第六章

第四章 社会復帰への階段

1.ニート脱却へ

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10月22日(木) 19:00頃

【暫くぶり、仕事での疲労感】

今日は、あまり仕事に集中できなかった。

午前中は、個人的に「意味が無いな」と思っているが、以前から行われていた慣習と言う事なので異議を申し立てず(まあ、異議を申し立てる相手もいないのだが)こなしておこうと捉えていた作業に、取り掛かる予定だった。
でも、自分で「意味が無い」と思う事をしていると、あまり集中する事が出来ないらしく、色々と気がそれるようで、いつの間にか、私の管理している売上データを基に店舗毎の売上実績のグラフなんかを作って遊んでいた。
店舗の場所と売上を単純に比較しただけで、フロア面積等様々な環境要因を考慮せずに思案していただけなので無益に等しいのだが、「この店舗、何故、この立地でこんなに売上が少ない訳?土地柄を考慮したり、客層を間違えていたりするのでは?」等と暇つぶしに考えていた。
そんな事で、午前中の時間は潰れた。

午後に入ると、ちょっとしたイレギュラー処理などがあって、バタバタしていた。
バタバタしたせいもあり、14時頃に気が抜けたので、昼休みをとる事にした。(この職場では、昼休みの1時間は、各々自由な時間帯にとれる。)
しかし、何故か歩いて数分の家に戻る気にはならず、近くのコンビニで、お気に入りの餡パン一袋(小さいの5個入り)と500mlのコーヒー牛乳を買って、会社で昼食を済ませた。
会社に居ても、「昼休み中」なので、のんびりと餡パンとコーヒー牛乳を口にしながら、寛いでいた。食前と食後のタバコも欠かさなかった。また、「デパス」も食後にきちんと飲んだ。

こうして40分ぐらいの休みを取り、「暇だから仕事でもするか。」とデスクに構え、単純な日次業務と、午前中にやろうと思っていた「意味が無い」作業を済ませた。
そして、残業も無く、17時には仕事を終えた。


こんな風に大した事もしていないのに、今日は仕事を終えてから、久しぶりに「仕事が終わった後の疲労感」を覚えた。出勤と言う形で仕事をしていた時は、常に感じる当たり前のものだったが、それを久々に思い出させられた。

担当業務にも慣れ、さらにそれ以上の事に思いを巡らせたせいであろうか。

実は、お昼休み中だったか、その前後だったかに、外の喫煙所で一服しながら、とある20代であろう社員さん(Aさんとする)と次のような会話をしていた。

A:「金子さんってSEだったんですか?」
私:「まあね。最初、3年ぐらい小さい会社でソフト屋をやっていて、それから2年程、XX社(誰でも知っている大手企業)で派遣社員としてSE兼PGの仕事をしていて、その後フリーでSEやらPGやらをやっていたんですよ。」
A:「へぇ〜、そうだったんですか。さっき、他の人から“SEだった”って耳にしたもので。」
私:「一応、フリー(自営業)の届出は廃止していないから、今でもそんな肩書きが残ってるとも言えるけどね。」
A:「じゃあ、確定申告は自分でやっているんですか?」
私:「勿論。ただ、今後この職業は止めようと思っているから。それで今は暇つぶし的に、こんなところでアルバイトしてるんですよ(笑)。」
A:「でも、良いですよね、フリーの立場って。会社のしがらみとか無くって。」
私:「確かに。自分を中心に考えられるのは大きな利点よね。まあ、その反面、全ての責任が自分に直接来るから、厳しいけど。」
A:「そうですよね・・・。そう言えば、さっき○○○(この会社のシステム関係の懸案事項)の事に首を突っ込んでましたよね。」
(この会話の前に、私は、気晴らし感覚で、他の社員さんに○○○の事を尋ねていた。)
私:「まあ、遊び半分だけど。昔の名残か、ちょっと気にかかったんで、情報収集していたんですよ。」
A:「そうですか・・・。私は○○○の件にも関わっているんですが、色々と大変なんですよ、うちの会社も、人使い荒くって。私なんか、今、店長を担当しているのに、以前本社に居たものだから、社長からは本社の人間的な感覚で色々使われちゃって、それで○○○の件も、どうするか考えなきゃいけないし・・・。社長もシステム的な事は疎い方で、短絡的に判断しちゃうものだから、説得する資料とか色々作らなきゃならないんですよ。」
私:「○○○の件も色々とその費用を試算して判断しないといけないですからね。誰がどう使うか、それで短縮できる時間はどのぐらいになるか。また、継続的に管理していくコストや人員も考慮しなきゃいけないし。最終的には金銭的に見えるような形まで落とし込まないとね。結局は、お金次第での判断でしょうから・・・。」
A:「極論、そう言ってしまえばそうですが・・・。それにしても、金子さんがSEだからと言って、もし○○○の事を兼任して貰うようになるなら、所属とか転籍する必要あるでしょ?」
私:「そこら辺は、私も分かってますよ。私は飽くまでも、『伝票処理のアルバイト』として、ここでは仕事しているだけですから。もし、○○○の件でSE能力をそれなりに使うようになるのなら、私からも社長に契約面の事は主張しますよ。今の安いアルバイト代で本格的なSE能力を売るつもりは毛頭ありませんから。いざとなれば、フリーSEとして別契約しても良いでしょうし・・・。それにしても、Aさんも大変そうですね。」
A:「(笑)。ホント大変ですよ。それじゃ、あまり下手に社長に使われないように気をつけて。」
私:「分かってますよ。それじゃあ、本当にお疲れ様。」


私は、タバコをふかしながら、こんな他愛も無い会話をしている中、何故か膝が震えていてる事を自覚していた。
会話の最中、「この緊張は、どこから来るのだろうか。意識ではリラックス状態と判断しているのに、無意識のところで何か違うものを感じているらしい。これが、“病気”と言えるかもしれない状態の私に出る症状の一端かしら。」と、考えてもいた。
そして、会話が終わってからも、この原因を少し探っていた。
結果、その時は、2つの事が“震え”の基として予測出来た。
1つは、会話の中で、私がビジネス的立場で見解を述べなければならなかった事。
もう1つは、“鬱病”と診断され入院などをした結果、今のアルバイトをしている事を告げないように配慮していた事。(面接の際に、社長から「鬱病の事は皆に言うな」と言われていた。)
こだが、「疲労感」の一因であるかもしれない。

また、これを書いていて、もう1つ、疲労感の要因が思い当たったので、記しておく。
私は、午前中「会社の売上」を気にしていた。
これは、「会社が潰れてしまえば、社員は忙しいだとかなんだとか愚痴をこぼしていられる今の状況では無く、失業となり、人によってはより深刻な経済的危機に陥ってしまう。」と、経営者的な感覚でこの会社の事を考えていたからだ。
自営業で生計を立てていた為か、どうもこの様な思考ベクトルからは逃れられないらしい。
私は、「唯のアルバイト」と自覚しているにもかかわらず、どうも変なところにまで気を回しているのだ。


この疲労感を私は、「経済的に自立して生計を立てていく限り付きまとう物」と、捉えているのだが、この思い込みのような考えが、私自身を精神的に追い詰めているのかもしれない。

しかし、「仕事ってこう言う物だよな。」との感覚は、未だ変わらない・・・。


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