鬱病生活記

 表紙
 目次
 はじめに
 第一章

 第二章

 第三章

 第四章

 第五章

 第六章

第二章 精神病院での入院暮らし

1.精神病院生活記

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4/12(日) 16:00頃

【カラオケにガッカリ…】

カラオケの時間が始まった。というか、始めさせた。
カラオケができる時間になった時、私は看護師の言った言葉が耳に入た。
「今日は、Yさん(患者)が居ないからカラオケは要らないか。」そう言って、カラオケの準備などせずにさっさと看護室に戻ってしまった。
「えっ、カラオケするかしないかは、Yさん次第なの?」
この日は仲間内で「今日はカラオケだね。歌おうね。」と心待ちにしていたのに、「誰かカラオケやる人いませんか?」と聞く事もなく、看護師達は去って行った。
私は後をつけ、「カラオケしたいんですけど。」と言うと、「Yさんが居ないから今日は必要無いと思ってた。」と呟きながら看護師達がカラオケの道具を用意し、セッティングを始めた。
「Yさんだけがカラオケするわけではないでしょ。実際に先週は、結構皆が楽しそうに歌っていたじゃないか。」と少々の憤りを感じながら、ダイニングルームに居合わせたケースワーカに、「カラオケしたいかどうかぐらい皆に聞いたら良いじゃないですかね。」と何となく問いかけると、ケースワーカーも「そうよね。」と言っていた。

病院の職員の序列としては、医者>看護婦>ケースワーカ>掃除のおばちゃん、となっているようだが、権限的に下位に居る人の方が、本当に人間らしく扱ってくれることを、私は感じ取っていた。

さて、カラオケの選曲帳を見てがっくり、「通信カラオケじゃないんだ・・・。」
ということで、入っている曲は、年配者向けのものが中心。当然、私の希望していた曲はなく、なんか落胆。
「まあ、歌わなくても良いか。」程度で、皆の歌を聴いていると『ひろさん』が『井上陽水』の『少年時代』を選曲した。私はマイクも持たずに口ずさんでいると、「2番歌って良いよ?」と気を利かせ、マイクを渡してくれた。歌いやすい曲なので、しみじみと歌った。
まずまず気持ちは良かった。

久しぶりにカラオケでも言って、好きな歌で大声出したいな。



4/12(日) 16:20頃

【やっぱり私は病人】

ベットに横になりながら、小刻みに震える手で、これを書いている。

この無気力感。これが私の病気だ。
腹が減った。
眠い。
だるい。
腹が減った。
「よし、タバコを吸いに行こう。」
一瞬そう思ったが、これを書いている間に気が失せた。

腹が減った。

誰もいないところで、少し薄暗い所で、自然の音、風や木々や草花の音、そんな音しかしないところで、タバコを吹かしたい。


書いていたら、少し気力が出てきた。
ベットから起き上がり、行こう、タバコ部屋へ。

しかし、腹が減ったな。


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