第三章 鬱病者としての日々
2.調停待ちの日記
8月3日(月) 18:30頃
【“うつ”の位置づけと分類】
昨日の講演会で得た情報で私が考えた事について書きたい。
まず、現在、世間一般で認知されている『鬱病』とは、医学的に分類するところの『うつ的気分』、『うつ状態』、『うつ病』を十把一絡げにしているのではなかろうか。
私の主治医が、「本当の鬱病は、何の脈絡も無く突然起こる。」と言ったように、「仕事のストレスで鬱病になった。」と言うのは、『鬱病』になったのでは無く、適応障害(職場不適応)が起こり、『うつ状態』に陥ったと言うのが本当だろう。
『うつ的気分』、『うつ状態』、『うつ病』については、講演会から得た情報で、下記のように私は理解している。
1.うつ的気分
簡単に言えば、唯単に一時的に落ち込んでいるだけ。気分の問題で、
誰しもが体験する状態。病気では無い。
2.うつ状態
本来の『鬱病』では無いのだが、適応障害等が原因で起こる、『鬱病』と
同じような症状が出ている状態。病気として治療が必要。投薬も効果的な
事が多いが、根本の病因は人其々なので、対処法も様々。
カウンセリング等も効果的。
3.うつ病
突然起こる、脳機能障害。おそらく、脳内で「セロトニン」の分泌が悪くなる
病気。坑鬱剤等の投薬が非常に効果的。
『鬱病』を「こころの風邪」、「誰でも発症し得る可能性がある」等と、あまりにも中途半端な情報をマスメディア等が伝えた事によって、知識の無い物は、「うつ的気分」を『鬱病』としてしまい、「精神的な弱さが問題だ。『鬱病』なんて、気の持ち様。」と軽く見たり、落ち込みが激しいだけなのに「私は鬱病だ。」と思い込んでしまう、そんな人達が多いのではなかろうか。
ちなみに、私もそうなのだが、現状の精神科医や心療内科では、とりあえず『うつ状態』であれば、初診で『鬱病』と診断を下す。だから、外的な診断書等には、『鬱病』と書かれてしまう。これも、誤解を生む一因だろう。本来の『うつ病』の人など、『鬱病』と診断されている人たちの中には、殆んど居ないのだろう。
ちなみに、初診で『鬱病』か否かを判断するのは、余程のベテラン医師でなければ本来出来無い事なのだが、医師不足の為か、或いは、日本医師会が患者を増やし金儲けを企んでいる為か、若い医師でも『鬱病』か否かを判断出来るように、診断マニュアルが導入されたのである。このマニュアル導入の結果、現在、『鬱病』が増えているのだと、私は考えている。(前にも書いたが。)
専門家の間でも意見の分かれるところだろうが、闇雲に『鬱病』と言ってしまうと、『うつ状態』と『うつ病』が、これに分類される。まあ、どちらにせよ、医療機関に関わる必要がある代物だから、混同したところでそれ程害は無いのだが、現在の鬱で注目すべきところは、『うつ状態』の事なのだろう。講演会の内容も、適応障害の結果『うつ状態』になった人が、どの様に職場に復帰するかがメインであった。余談だが、講師として登場したある一人は、下手に『鬱病』と言う言葉を使わずに、単に『うつ』と言うようにしていた。これは、医学的に分類される、『うつ状態』と『うつ病』を、本人の中で明確に区分けしているからであろう。
さて、講演会の話は、専ら、「『鬱病』と診断され休業中の『うつ状態』の者が、どうしたら職場復帰をできるか。」であった。よって、無職の私がどう社会復帰したら良いのか参考になる情報は無かった。実際に、『鬱病』と診断された無職の人間に対しては、現状のところ、殆んど社会的支援が無いのだそうだ。まあ、この情報が得られただけでも、私にとっては十分だった。
そうれともう一つ、私も薄々と自覚していたのだが、「『うつ状態』の人間は『生活習慣病』も伴う事が多い。」と言う情報は、私に効果的であった。そして、「その様な者は、まず『生活習慣病』の状態を改善すべき。」と言う事だった。
(『生活習慣病』なんて病名にしているが、こんなのは単に、時間も決めずに腹が減った時に食事をし、寝たい時に眠り、起きたい時に起きる、私の様な生活をしている人間の事だ。病気と言うには、ちょっと大げさに感じるのは私だけであろうか。ちなみに、『生活習慣病』と言ってしまえば、私の大学生時代は、まさにそれである。でも、人間として決して異常とは思わなかったが・・・。)
確かに、生活サイクルが乱れている事は、社会復帰の為には大きな障害となる。そこで私は、「まずは、今の生活サイクルを変えてみようと。」と思ったのである。(前ページで、「直接的に私の行動に反映される様な話では無かった。」と書いたが、この件に関しては、嘘になるな。)
早速、今日、早起きを試みた。9時頃に目が覚めたので、床を這い出し「再び床に戻らないように。」と思って、朦朧とした意識で、体が重いのを堪え、タバコを吸った。タバコを吸えば、目を覚ますだろうと思ったのだが、どうも全然効果が無かった。昨晩は、午前2時頃眠りについたので、「睡眠時間は十分だろう。」と思考しているのだが、体が、そして精神力が着いてこない。私は、弱気になり、再び床に舞い戻ってしまった。また一時間くらいすると眼が覚めたので、またタバコを吸ったが、先程と同じで全く状態が良くならず、再び床へ舞い戻る。
こんな事を、3〜4回繰り返し、到頭、いつもと同じ13時頃になって、漸く覚醒してきたのである。
この感覚は何なのだろう。弁護士に相談に行った日などは、午前中から動けたし、何か予定があれば、それをしくじる事は無かった。なのに、「起きよう。」と思っても、体や心が着いてこない。自分で自分が不思議になる。堕落した生活をしているせいであろうか。それとも、昨日出かけた疲れでも残っていたのであろうか。
「もしかしたら、薬の副作用か?」とも考えたのだが、それなら、予定のある日だって同じ様な症状が出る筈だ・・・。
とりあえず今日は24時くらいには寝て、明日は8時頃に起きようと、今のところ考えている。(でも、音楽作成は夜の方が集中出来るんだよな・・・。こんな事が思い浮かぶのは、私の心が堕落してしまった故の賜物だろうか?)
最後に、鬱病について客観的に理解したいのであれば、精神科医等の専門家が書いた本を数種類読むようにして欲しい。専門家によっても考え方や捉え方の違いがあるので、複数読む必要がある。ちなみに、私が『鬱病』と診断される前に読んでいた本を、勝手に紹介させて貰う。
タイトル:「うつ病をなおす」 著者:野村総一郎 (講談社現代新書)
この本は、専門的な立場で解説しつつも、症例等を上げ具体的に説明されているので、非常に読みやすくありながら、専門的知識についても得る事が出来る物だ。
何冊か読んだ本の中で、今手元にあるのがこれだけなので、これしか紹介出来ない。(基本的に読み終わった本は、中古屋さんに流す人間なので。)
テレビ番組のコメンテーター等としても活躍しているので御存じの方も多いと思うが、『香山リカ』さんの本なんかも良いと思う。ただ、私からの忠告として付け加えるなら、この方の本の内容は、派手と言うか、極端と言うか、一般的な通説を否定するような観点があるので、この方の言う事だけに傾倒するのは危険だと言っておく。(確かに、斬新的な視点で迫っているのだろうが、単に派手で目立つ様な事を主張しているだけ、とも捉えられるので。)
ここで紹介した2人の方々は、この業界(精神科の世界?うつ病の世界?)ではかなりの著名人なので、あなたがもし『鬱病』として診察を受けている主治医がいるとしたら、その主治医に「二人の事を知っているか?」を、それとなく訊ねてみると良い。知らない様なら、主治医を変える事をお勧めする。ちなみに、私が主治医に「野村総一郎先生とか香山リカ先生とかの本を読んだ事がある。」と言った時、私の主治医は『香山リカ』さんの事を「あぁ、新うつ病説の人ね。」なんて言っていた。以上、ご参考までに。
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