鬱病生活記

 表紙
 目次
 はじめに
 第一章

 第二章

 第三章

 第四章

 第五章

 第六章

第三章 鬱病者としての日々

2.調停待ちの日記

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8月6日(木) 16:00頃

【やり始めたら止まらない性分】

特にやる事も無いので、こんな日記を書いているのだろう。

今日も、早起きはしなかった。『生活サイクルの改善』を実践しようと思っても、三日坊主すらならない。
確か、今日も朝5時くらいに一旦目が覚めたような気がする。それから、床を出てタバコを吸い、また床に戻る。床に居ながら、音楽を聴いたりする。そんな事で、動きだすのはいつも通り、13時頃になってしまった。
床に居る時、沢山汗を掻いたせいであろう。そして、何となく床に向けて付けていた扇風機のせいであろう。私は、寒くて堪え切れなくなり、床から這い出て、シャワーを浴びに行ったのでった。体を温めると目が覚めるだろうと言う思惑もあり、シャワーを浴びていた。
しかし、シャワーだけでは、中々体が温まらない。湯に浸かろうと思い、バスタブに身を移し、お湯を溜め始めた。
バスタブの内側の側面を撫でると、ザラザラとした汚れの感覚が、手から伝わって来た。そして、手でそのまま撫で続けると、その汚れが落ちる事が分かった。
バスタブで私で正坐をしていた。まだ、膝も浸からない程しか、お湯は溜まっていなかった。
けれども私は、手でバスタブの汚れを落とす事に熱中しだし、少し溜まったそのお湯を使いながら、せっせとバスタブを素手で磨き始めていた。
一通り、汚れを落し満足した私は、バスタブの栓を抜き、まだ腰も浸からぬ程しか溜まっていないお湯を捨て、バスタブを出た。
簡単にシャワーを浴び直す時には、寒気も治まっていたので、バスタイムは終了した。

それから、空腹を感じては、アイスを食べ、タバコを吸う。そんな事を、夏休みの子供向けアニメ番組を見ながら、繰り返していた。
昨日体重を計った時、1キロ程、増えていた。食生活のせいだろう。最近、アイスばかり食べているから。しかし、腕周りを見ると、大量服薬の一件の時より随分細くなっているのが分かった。おそらく、胴周りの筋肉が贅肉に変わったのだろう。最悪だ。

不図気付くと、居間のフローリングの床に、塵や埃があるのに気付く。気付くや否や、クイックルワーパーで掃除をしたり、時には、濡れぞうきんで拭いたり。綺麗になったと思っても、1時間もすれば、また、床の汚れが気になり、落ち着き無く、私は動き回る。
これも、何時もの事だ。

今日は特別、扇風機の掃除もした。寝ているとき以外、殆んど点けっ放しであるから、扇風機も余程疲れているだろうに。実際、旋風区の汚れは酷かった。前後の柵を取り外し、水洗いした。プロペラは、ティシューで拭きとった。プロペラの汚れを落としている時、扇風機の土台の上に白いダニが一匹通過するのを、私は見逃さなかった。グレーの扇風機の上に出てきてしまうと、白いその体は目立つ。何の躊躇も無く、私は手にしていた一枚のティシューでそいつを葬り去った。おそらく、そいつは、扇風機に積もっていた埃の中で生活していたのだろう。
ダニなんて、この部屋の中に一杯居るんだろうな、私が認識していないだけで。
しかし、この部屋にたった一人いる私が気付かなければ、私が影響を受けなければ、居ないのと同じである。物は、他の物に認識されて初めて、生まれるのかもしれない。


そう言えば、今日は、久しぶりに良い夢を見た。良くあるマンガの主人公の様な設定で、甘酸っぱい感じの恋愛系の夢。
何故か同居している男の友人が居て、お互い表には出さないが、ちょっと恋愛感情を持っている。(ちなみに、お互い高校生の設定。)
そこへ、主人公(私)の隣の家に住んでいた幼馴染である男性が、久しぶりに帰郷してきて来て顔を合わせる。顔を合わせた途端、お互い昔とは違った何かを感じる・・・。
そんな、有りがちな設定の序章の場面だった。
何だか、久しぶりに“恋心”などと言う乙女チックな物の余韻が、夢から覚めても残っていて、そんな自分がとても印象的だった。
漸く、私も新しい事を考え余裕が出て来たのだろうか。それとも、いよいよ現実逃避や妄想が激しくなり、深い沼地に陥って行く最中なのだろうか・・・。


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