第四章 社会復帰への階段
1.ニート脱却へ
9月29日(火) 23:50頃
【アルバイト二日目(最近眠りが浅い)】
就寝前の薬を先程、飲んだ・・・と思う。
ここら辺の、断片的な記憶力の欠如は、退院後、よく見られる症状なので、あまり気にしてはいないが、初歩的なミスにつながりやすいので、注意はしている。
薬を飲もうと思った後(そして、薬を飲んだ後)、タバコで一服していたところで、「あれ、薬飲んだっけ?」と思い起こす始末。
結局、残りの薬の数と、ごみ箱に入っている薬の殻を確認して、「飲んだのだろう。」と結論付けている。
やはり、一昨日の就寝後の「金縛り」現象もそうだが、昨晩も、ちょくちょく目を覚ましてはアイスを貪ると言った感じで、長時間の熟睡は出来ていない。
やはり、仕事始めの緊張感と言うものが意外と無意識下で膨らんでいるのだろう。
さて、今日の仕事も、無難にこなした。
これまでに書いたかどうか思い出せないので、ここで改めて
仕事の内容を簡単に書くと、「経理部門での単純な伝票処理」である。処理している伝票は、毎日各店舗から上がってくる売上げ日報。
ちなみに、この会社は、格安が目玉である十数店舗の衣料品店を経営している。
毎日、それら店舗から売上日報が来るので、その内容をチェックし、次の担当者に回しているのが私の現状。
でも、そんな中、私は色々と考えながら仕事をしている。
経理の現場での仕事は初めてだが、これまで、システムエンジニアとして、経理関係のシステム構築に携わったりしているものだから、「
最終的な決算報告書類に至るまで、どのような仕分けが行われているのだろうか?」と、想像しながら仕事をしていると、今は単純な作業でも、非常に楽しめる。
この会社の店舗での売上は、クレジットカードか現金での取引。
そんな売上日報を見ていても、「これ何?」的なものが見つかる。
とりあえず、近くの先輩職員に聞くのだが、どうも、その人も経理の基本的なことが分かっていないらしく、さらに上長の人に質問する始末。
しかし、どうもその上長の説明からも、直接的な具体的な説明が出てこない。
「実はこの人も良く分かっていないのでは?」等と勘ぐりながら、結局、お店の店長さんが事務所に来た時(近い店舗の人は、大体毎日来るので)、直接店長さんからどんな出来事があって、どの様に処理をしたのか聞き出して、私は納得した。
そして、私の知人に経理の人がいるものだから、帰宅後、その人から色々補足して貰い、段々、会社の、特に経理周りの業務フローが頭に出来つつある。
いまだに残る、システムエンジニアの考え方で言うと、まず先に、その会社の業務フローを作り出すと言うのが、上流工程での初っ端の作業になる。
私は、単純な作業をしながら、まずは、経理周りの業務フローを頭の中で固めている。
ちなみに、私は個人事業主(フリーSE)だった頃、日商簿記の3級の資格を取っていた。
この会社には工場が無いので、製造原価云々の話は出てきそうに無いから、3級程度の簿記の知識でも、結構、役に立ちそうだ。
だから、今のところ飽きずに、淡々と作業をしつつも、「下手したら、アルバイトながら、この会社の経理について、直接税理士さんとやり取りを出来るくらいまで、スキルを磨けるのではないか。」とまで思ってしまう。(しかも、今居る経理の部長らしき人は、前職の人が高齢の為に辞めてしまい、ほんの繋ぎで入っただけで、その人も近々辞めてしまうとの事。)
だから、数週間後に残った輩で、果たして、本格的な経理の経験と知識を持った人がこの会社に居るのかは定かではない。寧ろ、このところの様子を伺うに、その値の人は居ないであろうと感じ始めてきている。
また、それとは別に、経理を中心とした会社全体の業務フローをつくり、業務効率化や各店舗の売上情報(もちろん、今後の流行を考慮して何を仕入れれば良いかの役に立つもの)を作っていけるのではないかと、大分先の長い話になるだろうが、そんな事まで想定している。
だから、生活費を下回る単なるバイトの安月給ながらも、色々勉強が出来て、楽しめている側面もある。
不安なのは、やはり、店長とか営業側の人種は(まあ、どこの会社でもそうなのだが)、灰汁が強い人が多そうなので、その人達とうまく関わって行けるかどうか、という所。
幸い私の相談役となる総務の人は、気配りや度量のある方みたいなので、行き詰ったら相談できるという安心感もあり、当面、この調子で仕事は続けられそうだ。
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